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第290話
「侍従長、呼ぶまで下がっていろ」
サーミフは瞼を閉じ、ずっと扉の近くで控えていた侍従長に命じる。彼は静かに一礼すると踵を返した。パタン、と控えめな音が耳に響く。
「最初に言っておく。今の段階で話せることは少ない。なにせこちらも処理しなければならないものが多かったからな。残党がいないかを追っている最中でもある。まだ、全てが明らかになったわけでもない」
事実サーミフが新たに得たものはこの報告書だけだ。それに軽く目を通しただけで話を聞きに行くこともできていない。だから今から話すことが必ずしも凪の疑問に答えるものではないとサーミフは釘を刺す。その言葉に凪は重々しく頷いた。元より承知の上だと。
「ナギの言うとおり、私はお前たち親子を疑っていた。関係の長い閣下とヒバリ殿は父の正妃を知っている。だから偶然を装って酷似した女をこの王宮内部に入れようとしたのではないかと」
父である国王はひたすらに正妃を愛していた。儚くならなければ、今も国王は共に年をとった正妃を愛し慈しんでいたことだろう。そこにつけ入り何かをしようとしているのではと思わざるを得ないほどに、国王の前に立った女の顔は正妃に似ていた。
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