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第303話
確かに急を要することだろう。国王として動かなければならないこともわかる。しかし、それならばナイーマ達と共に部屋の外へ出すか、あるいは何かしらの口実を作って国王を呼び出せば良かったはずだ。サーミフは成人をしてからずっと国政に関わっている。彼が国王と二人きりで話すことなど珍しいものではないのだから、潜んでいるかもしれない間者を警戒してという理由でもないだろう。では何故なのか。そう問いかける国王に、サーミフは数枚の紙を差し出した。
「これは件の宝石商や武器商人らが持っていた契約書のコピーです。契約者の欄に書かれている名前について、説明をいただきたい」
渡されたそれに国王が視線を落とす。同時に夫人もまた横から覗き、そして揃って目を見開いた。
「望月、つば、き……」
かつての名を夫人が呆然と呟く。勢いよく国王が夫人を振り返った。
「これはいったい……」
信じられないと言わんばかりのそれに、夫人は慌てて勢いよく首を横に振った。何度も、何度も否定する。
「違います! このようなもの、私は知りません! 宝石ならば、確かにナイーマのために幾つか買った記憶はありますが、それらはすべて陛下にご相談した上でのもの。このように高額なものを幾つも買ったりはしません! まして武器なんてッ!」
そんな恐ろしいことはできない。考えたこともないとツバキは国王とサーミフに訴えた。必死の形相は混乱してのこととも、事態発覚を恐れてのこととも取れる。どちらとも判断がつかない彼女の姿に、しかしサーミフは静かに頷いた。
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