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第304話

「少し前であれば、私はその言葉を決して信じはしなかったでしょう。なにせあなたの部屋からは問題の宝石ひとつ見つからず、だというのにあなたに宛てがわれた金銭は減っている。そしてそう頻繁ではないが年に幾度かは兎都の使者があなたの元を訪れているという事実がある。そして〝望月 椿〟の署名。これで何も知らないなどとまかり通るはずがないと」  ずっと疑い続けてきたのだ。歪なそれが目につくのは早かった。宮殿の中でなら、サーミフが何かを探るのは容易い。夫人の部屋とて常に誰かがいるわけでもないのだから、数日ほどかければ隈なく探すことも可能だった。 「あなたが、兎都と通じていると」  そのためにディーディアの王宮に入り込んだのだと。  きっと、信じて疑わなかった。 「そのようなことは決してありませんッ」  あり得ない、違うとツバキは叫ぶ。だが渡された契約書にはすべて椿の名が書かれているのだ。ツバキの筆跡で、兎都を出た時に捨てたはずの〝望月 椿〟の名が。だというのに、誰がツバキの〝違う〟という言葉を信じるというのだろうか。

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