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第305話

 どうしたら、とツバキが顔を青ざめさせる。国王は思案しているのか何も言葉を発しない。その光景にサーミフはゆっくりと瞼を閉じた。耳の奥に懐かしさが蘇る。 〝サーミフったら、怖い顔をしているわ。あなたはとても優しいのに、その顰めっ面と頑固さで隠されて、もったいないわ〟  叱るような言葉を、しかしまったくそうと感じさせない優しい声音で言った人。  今はもう亡き、母の声。そんな母と似ている顔が恐怖と不安で青ざめているのは、あまり見たいものではない。 「決してありえない。その言葉の正当性を証明せよとは言いません。既に、密かに協力いただいていたウォルメン閣下とヒバリ殿が証明してくださいました」  そう言ってサーミフは懐から小瓶を取り出した。香水瓶のように小さく、真っ赤なそれを見て夫人は目を見開く。 「それは……」 「夫人のご実家からという名目で送られてくるもの、ですよね? しかし調べたところ、夫人のご実家である水無月家は荷物の中にこのようなものは入れていないと断言しております。そしてその入れられていないはずのこれこそが、夫人の記憶を消し、傀儡にした源泉です」

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