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第306話

 水無月家は椿の身を案じるだけの、どこにでもいる身内だったと兎都に赴いた兵士は言っていた。何も知らないという言葉を信じないわけではないが、それでも言葉だけを鵜呑みにして帰ることはできないと言えば、快くその場で協力もしてくれたという。結果、本当に水無月家からは何もでなかったし、後日、水無月家と懇意にしている者がディーディアへ向かう使者を偽って荷物に紛れさせていたことが判明した。この、兎都の者にとっては毒でしかないものを。 「ウォルメン閣下が教えてくれました。これは、我々が口にしてもただの水でしかないが、兎都の者が口にすればたちまち毒となるものです」 「毒だとッ!?」  サーミフの言葉に国王は思わず身を乗り出す。夫人も顔をさらに青ざめさせた。 「ええ、毒です。しかしこれの真価は毒ではありません。少なくともこれを紛れ込ませた者にとって毒は副産物でしかない。彼らの目的は夫人の記憶を奪い、意のままに動かすこと」  最初は救いだった。けれどそれは結局毒でしかなくて、最後は言葉を信じ込ませるという恐ろしいものに変化した。人の罪深さゆえに。

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