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第308話

「都合の良いモノには代償がつきものです。これの代償は服用者の寿命でしょうか。即効性の毒ではなく、これを飲んだからといって今日明日に命が失われるわけではありません。ゆえに気づきにくいとも言います。しかし飲み続ければ確実にその身体を蝕み、命の長さを奪われる。ゆえに、これは兎都の者にとっては毒となるでしょう。夫人にも、ナイーマにも、ナギにも」  あなたの息子もこれを体内に入れてしまった。そう告げたサーミフにヒュッ、と夫人は息を呑む。震える手がサーミフに伸ばされた。しかしそれはサーミフに届く前に勢いよく立ち上がった国王に掴まれてしまう。 「そのような危険な物があるとは。誰か! はやく医者を呼べ! 夫人とナイーマの診察をせよッ!」  こうしてはいられないと国王は夫人の手を引っ張って立ち上がらせる。国王の命令に使用人たちが部屋へ押し寄せてきた。 「ま、まって、待ってください!」  夫人が混乱しながらも国王に願うが、毒を服用していたという事実が国王の耳を塞ぐ。 「サーミフ! わかっているだけの資料を早く医者に渡せッ。解毒に必要な物があればすぐに取り寄せよ!」  ナイーマを早くこちらに! と叫び、夫人を寝室に引っ張っていく父の背中をサーミフは静かに見つめた。 (これが、あの子がずっと見てきた現実か……)  父は、知っているはずだ。この宮殿に住まう者ならば、例え新人の下級使用人ですら知っていることなのだから。知らないなどとは絶対に言えない。だが、わかっているはずなのに、サーミフがわざと口にしたのに、命を助けたいと願った父の口からは、ついぞあの子の名前はでなかった。おそらくは、無意識ゆえに。

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