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第314話

「噂を覚えていたとは、非現実的なことが嫌いな君にしては珍しい」  一笑に付して記憶から抹消しているものとばかり思っていたよ、と閣下は面白そうに言う。サーミフも己の性格は理解しているため、ただ静かに頷いた。 「あなたの姿がまったく変わらないので、覚えてはいました。しかし、信じてもいなかった。現代の技術を集め、閣下ほどの地位と財力があれば、見た目を変えないことは可能なのかもしれないと。しかし、今回のヒバリ殿を見ては、信じざるを得ません」  サーミフは医学に明るいわけではないが、あの時のヒバリは誰がどう見ても心臓を貫かれていた。仮に心臓から外れていたとしても、あの床を真っ赤に染めた夥しい血の量を見れば失血死は免れないだろう。だが、ヒバリは生きている。それどころか絶対安静を言い渡された凪よりもよほど容体は安定しているだろう。それは現代の医学では考えられないことだ。流石のサーミフも、目の前で起こったことを御伽話だと否定することはできない。 「閣下の一族が特別、とも考えましたが、どう見てもあなたとヒバリ殿に血の繋がりがあるようには思えませんし、一族の者を使用人として扱っているのも気になります。わからないことは多いが、それでも、あなた方が不老不死だというのなら、ヒバリ殿の危険にも関わらず閣下が落ち着いておられたのにも納得できる」  閣下にとってヒバリは大切な小鳥だ。失われるかもしれないとなれば凪のことも国の関係も全てを放って助けに行くことだろう。しかし彼はそれをせず、悠長ともいえる様子でサーミフらと行動を共にした。ヒバリが決して死なないとわかっていたから。

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