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第315話
「君に謎を残しておくのは得策ではないだろうからね、特別に教えてあげようか? 幸いにしてここは私の領域だからね」
ソファの肘掛けにほんの少し身体を寄せて閣下は己の横に空いた空間を見つめた。その瞳はひどく優しく、そしてどこか寂しげに見える。
「君の言う特別とやらはね、私だけなんだよ。ヒバリとロールは私の我儘に無理矢理付き合わせてしまったというべきかな」
だがその特別も望んだものではない。
「死にはしないという一点を除けば、他はあまり人と変わりなくてね。空腹を耐えるのは嫌だし、寒さに震えるのも、暑さに乾くのも嫌だ。寝る時は柔らかなベッドでゆっくりと寝たいし、雨風に晒されるのも嫌だから家も欲しい。それを叶えるには金が必要だ。だから必死になったものだよ。なにせ他の人と違って終わりというものが無いからね。そんなことをしていたら、いつの間にか今の場所に立っていた。ま、ヒバリに美味しいものを食べさせて、温かな服を着せてあげられるという点では良かったというべきなのだけどね」
ウォルメンの名さえ、望んで得たものではない。そう告げる閣下にサーミフはほんの少し目を見開いた。
サーミフが生まれた時にはすでに、ある意味でセランネに君臨していた王が、それを望んでいなかったとは。
「ま、ありがたいことに使用人たちは自ら私の側にあることを望んでくれたし、ヒバリもロールも私の腕の中にいるから不満はないけれどね。これで君の疑問には答えが出ただろう。だが、他言無用で頼むよ。この話を〝噂〟程度にするのに随分と時間がかかったんだ。また群がられてはたまらない」
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