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第316話

 いつの時代であろうと、永遠の命、永遠の若さを望む人間はいる。閣下は終わりがないゆえに金銭面を心配し、実際に苦労したこともあるのだろうが、今の彼は地位も財産も十分すぎるほどに持っているのだ。ヒバリに対する態度が証明であると、その立場を欲しがる者は多いだろう。人間は欲望に忠実なのだから。 「懸念はごもっともです。言いふらす気はありません。しかし、ナギには伝えてもよろしいか? よほど衝撃的だったのか、あの霧を吸い込んでいながらも記憶は朧げながらにあるようで……ヒバリ殿の心配をしています」  ナイフで貫かれた胸、自らに降り注ぐ真っ赤な血。あの廃工場で使われていた霧が原液ではなく随分と薄められていたものだったからか、あるいは廊下や玄関などでは使われていなかったからか、凪からその記憶は失われていない。別の誰かであったなら、それが例え国の重鎮だったとしてもいつかは会うことができるため凪にもその姿を見せて安心させることはできるだろうが、ヒバリだけはそうもいかない。閣下が隠そうと決めてしまえば、もう二度と会えないのだ。そんな状況で〝自分のせいで殺してしまったかもしれない〟などという思いを持ち続けるのは酷というものだろう。サーミフの懸念に思い至ったのか、閣下もあぁ、と小さく頷いた。 「確かに、あの霧が記憶を奪っていないのだとすれば凪殿にとって現状は酷だろうね。報告でしか判断はできないが、知らぬことと割り切れるような性格でもなさそうだし。凪殿にも他言無用だと釘を刺してくれれば、伝えるのは構わないよ」  凪が気に病むのはヒバリの望むところでもないしね、と閣下は穏やかに微笑む。どこまでいってもヒバリを優先するその姿に、サーミフはありがとうと言いつつ吐息混じりに笑みを零した。

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