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第317話

「そういうものだ、と思いつつも、ずっと不思議だったのです。なぜ、閣下ほどの人が公に隠すことなくヒバリ殿を愛し、守り、側に置くのかと。ですが、今なんとなくわかった気がします。あなたが放さないのは、ヒバリ殿だけだったのですね」  ウォルメン閣下が地位を放さないのではない。国が、周りが、ウォルメン閣下を放さないのだ。当の彼が必死になって握り続けるのはヒバリの手だけで、もしもヒバリに害ありとみなせば、どんな手を使ってでも今の地位を壊しにかかるだろう。根底が違うのだ。サーミフが今の今まで答えに辿り着けなかったのも当たり前か。 「閣下がやけに兎都の者に詳しかったのも、すべてはヒバリ殿のため。そうでしょう?」  神話と呼んでも良いほど昔の話をあれほどまでに調べ上げるのは存外難しい。少なくともヒバリが滞在していた期間では不可能だろう。御伽話と笑い飛ばしたくなるような、意図的に絶滅させた花の薬の存在にたどり着くまでに何年かかることか。だが、悠久の時を生き、ヒバリを愛している閣下であれば、あれを知っているのにも頷ける。 「本来なら、あれほどの情報をいただいたのですから自分で調べるなり探すなりするのが道理でしょう。しかし、そう悠長にできる保証もない。ゆえに、教えていただきたい。閣下は〝あれ〟の解毒薬をご存知だろうか」  時は戻せない。すでに体内に入ってしまった毒を未然に防ぐことなど不可能。時間が経ち、吐き出すことさえもできない。ならば解毒薬で中和させるより他ないが、サーミフとてあの夜に初めてその存在を知ったのだ。ディーディアには情報が無さすぎる。どれだけ優秀な人材がいようと、ゼロから解毒薬を作るのは難しい。途方も無い時間がかかることだろう。だが、この人なら、とサーミフは視線を向ける。閣下はゆっくりと瞼を閉じ、首を横に振った。

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