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第327話
「よかった……」
零れ落ちたそれはひどくか細かった。何度も、何度も噛み締めるように息をする。そしてどれくらい経っただろう。夫人は瞼を閉じてゆっくりと深呼吸した。そっと、その場に膝をつく。
「本来ならば私にそのようなことは許されないと百も承知で、それでもお願い申し上げます。知らなかったとはいえ、罪は罪。しかしこの件に関して凪もナイーマも何も知りません。罪があるは、私ただ一人。ですからどうか、子供達をお守りください」
形だけを見れば、国王にも王子達にも内密に、いち夫人が勝手に武器弾薬を用意し戦をしている国に売り飛ばして私服を肥やしたことになる。例えそこに夫人の意思が無かろうと、金銭が懐に入っていなかろうと関係ない。形としてはそうで、そしてそのどれもが重罪だ。処刑されたとて致し方のないことだろう。だが、恐らくそうはならないことをサーミフも夫人も感じ取っていた。
国王は、夫人を手放すことはできない。二度と会えぬと思っていた愛しい人と瓜二つの女人。そして愛しい娘もいる。二人に対しての情など、語るべくもないだろう。きっとどんなことをしてでも、夫人に罪は無いとするに違いない。このディーディアにおいて最強の守護だ。
けれど、凪は?
凪は夫人の――ツバキの息子だ。正真正銘、このお腹の中から産んだ子だ。それでも、このディーディアにおいて凪は一介の使用人でしかない。そして今や〝望月家の次男〟という捨て去ったはずのものさえついて回る。そんな彼を、誰が守ってくれるというのだろう。これ幸いとならないか、夫人は心配でならないのだ。
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