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第335話
十は超えていたとはいえ、まだまだ親に甘えたい幼子だったというのに、仕事こそ成人してからさせたものの、サーミフはそんな幼い子供から母親を奪ったに等しい。そして目一杯の愛情を注ぐどころか、側近にしてもなお気を許さず、疑い、怪しくなればそれ見た事かと信じた。確かにサーミフにとって凪と過ごした自分は偽りであったけれど、それでも、自分を偽るだけでなく、何一つとして凪の本質を見ていなかったという事に他ならない。
謝って、それで全てがなかった事になるなんて、そんなことを考えることはない。過去をやり直すことはできず、過ちを消してしまうこともできない。
できることは、ただ誠実であるのみだった。
そんなサーミフの静かな姿を、凪は目を見開きながら見つめている。どれほどの時間が経っただろう、沈黙を破るように瞼を閉じたのは凪だった。
「たとえ殿下が私情で動かれたとしても、それでも私は殿下が間違っていたとは思いません。ですから、どうか立ってください」
そっと、手を伸ばす。その手にほんの少し触れて、サーミフは立ち上がった。その姿に凪がホッと息をつく。
サーミフにとって謝罪は必要なものだった。王子だからといって過ちを認めないのは傲慢であるし、謝罪はするべきだと。しかし凪には少し負担が大きかったのかもしれないと思い、サーミフはベッドに腰掛けて凪の頬をそっと撫でる。宥めるようなその手に、凪はふにゃりと笑みを零した。
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