340 / 341

第340話

「私はもう大人です。ディーディア人から見れば小さく子供のような見た目かもしれませんが、とうに成人を超えました。そう、何度も何度も言ってきました。ならば大人として、私は認めるべきでしょう。私が夢想する方法の何一つとして、私や母を生かすことはできなかったのだと」  母に、ヒバリに、サーミフに、守られて生きてきたのだと。 「ですから、殿下がどれほど私を疑われようと、それは関係のないこと。ヒバリ様に関しては私が一方的に嫌いだと思っているだけです。それもまた、本当は認めたくなくてヒバリ様を嫌いだと言うことで型に嵌めただけに過ぎないと、自分でもわかっています。だからこそ、私は私の我儘よりも、大人になった私の感情を優先した。殿下に対して二心は持ちませんし、ヒバリ様が見せた苦しみは見ないふりをした。私からすれば、それだけのこと。これで、殿下へのお答えになるでしょうか?」  サーミフを見上げる瞳は恐ろしいほどに澄んでいた。凪は自分を大人だと言ったが、その瞳の純粋さにサーミフは己の目を隠すように瞼を閉ざす。  彼は確かに大人だ。そして本来であれば体験しなくてよい苦しみも得ただろう。この宮殿にあって、凪が第三夫人の息子であると知らない者はいない。夫人たちだけでなく、使用人までもが凪を見て言うのだ。悔しかろう、と。  かつては裕福な貴族の子息として傅かれる立場にあった者が、今は傅く立場になった。それどころか、血のつながった母だけでなく、異父妹にも頭を下げなければならない。母や妹は尊い存在であるのに、自分はただの使用人なのだから。そんな毎日は苦しかろう、悔しかろう、妬ましかろう、と。

ともだちにシェアしよう!