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第341話

 語られない限り、凪の本心はどこにあるかサーミフにはわからない。本当は人々の噂するように悔しく思っているのかもしれない。けれど、彼が心の奥でどう思っていようと、その瞳の純粋さは変わらない。  同じように、深淵を見てきた。それが王族の宿命だとサーミフは諦めていたし、受け入れてもいた。けれどサーミフは、あれほど美しい瞳を持つことは、できなかった。  見てきた苦しみが違うのだから当たり前だろうと人々は言うだろう。その通りでもある。けれどあの瞳を見た瞬間に、自分が戻ることのできないかつての光景を見たような気がした。 「ああ。……ナギは以前、私に〝母は大切にすべきものを見誤ったりしない〟と言ったな。その誇りがお前の中にも確かにあるのだと、理解しよう」  大義はどうであれ、凪は凪の中にある大切なものを決して見誤らなかった。そういうことだろう。 「ありがとうございます、殿下。…………あの、ならば」  ついと凪は瞳を揺らめかせてサーミフを見つめる。言葉よりも表情よりも雄弁なその瞳を、サーミフは瞼を開いて見つめ返した。 「ならば、あの……母は、許されると、思っても?」  サーミフが頭を下げた。そのことが全ての結論であろうが、凪はどうしても確証が欲しかったのだろう。不安そうに瞳を揺らめかせる彼に、サーミフは確かに頷いた。 「たとえ本人の筆跡が残っていようと、本人の意思が反映されていないものに対して責任を問うことはできない。無関係とはいえないが、それでもこの件に関して夫人が罰を受けることはないだろう。そして夫人をそう扱う以上、凪の責任も問わない」  お前にもなんら罪はない。その言葉に凪はハッと顔を上げた。

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