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第347話

 パチッ、と夢から覚めると同時に瞼が開いた。視界に汚れひとつないシーツの波が映って、サーミフは独り小さくため息をつく。ここしばらく、穏やかな朝というものを迎えていない。 「殿下、おはようございます」  扉の向こうから侍従長の声がする。聞き慣れてはいるが、今この時にあっては聞き慣れぬ声だ。また小さくため息をついていれば、侍従長はサーミフの返事を待つことなく入室してきた。寝起きが悪い――有体に言えば寝汚いサーミフを知っているからこその行動であり、凪も毎朝していたものだが、サーミフは侍従長に変わってからというもの、彼が声をかける前には目を覚ましていた。 「目をお覚ましになってもウダウダとベッドに懐くのが殊更お好きだった殿下の今を喜べば良いのか、嘆けば良いのか、私は判断に迷いますな」  ベッドの薄い天蓋を横で一つにまとめながら、侍従長はチラとサーミフを見た。ベッドに懐くどころか、すでに身体を起こしている彼の瞳は覚醒しきっており、服装さえ見なければ今この場所が執務室だったかと錯覚するほどだろう。 「今は寝ていたいなどと言っている場合ではないからな。だが、限られた者にしか見せていなかったとはいえ、王子の睡魔に抗っている姿など誰もにとって理想からかけ離れているのだから、侍従長は今この状況を喜べば良いんじゃないか?」  最後に微睡ながら目を覚ましたのはいつだっただろうか。まるで機械のように瞬時に眠り、瞬時に起きるようになって効率は良いのだが。 「そうですな。しかし、きっと亡きお母君はお嘆きになりましょう」

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