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第351話
むかし むかし、おおきな おくに に ちいさな おとこのこが いました
かれは このくにの おうじさまで なんでも もっていました
キラキラした きゅうでんも たくさんの めしつかいも
おうじさまの ために よういされる ごはんは とても ごうかで
おうじさまが きる ふくは きぬ でした
おうじさまが のぞめば てに はいらない ものなんて なにも ありません
「殿下、到着いたしました」
全ての思考を遮断するように瞼を閉じていたサーミフの耳に侍従長の静かな声が届いた。ゆっくりと瞼を上げ、車内から窓の外を見る。灰色の外壁をした、どこか暗く感じる建物が目に入って、サーミフは小さく息をついた。
「行こう」
その言葉が聞こえていたかのように、ドアが外から開けられる。降り立ったそこはディーディアの罪人が住まう収容所だった。玄関扉の前で待っていた看守がキビキビとした動きでサーミフに頭を下げる。
「お待ちしておりました殿下。どうぞこちらへ」
普通であれば王族が収容所に来ることなどそうそう無いが、サーミフはその役割ゆえに足を運ぶことも多々ある。看守の方も王子相手とあって改まった態度はしているが、どこか慣れも滲んでいた。
勝手知ったる、とまではいかないが、それなりに覚えている道を辿ってそれなりに広い部屋へ通される。王族が入るにはひどく簡素で薄暗い場所であるが、用意された椅子の正面には銃弾をも防ぐ透明なガラスが壁となっていた。その向こうにはすでに囚人服を纏った男が座っている。サーミフを前にしても、看守にせっつかれても立ち上がりもしないところは流石と言うべきだろうか。
「殿下、こちらに尋問した記録が」
サーミフを先導していた看守が、あらかじめ用意していた紙束をサーミフに渡す。椅子に腰掛けてそれらを捲るサーミフに、ガラスを隔てた男はつまらなそうな顔をして明後日の方へと露骨に視線を向けた。
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