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第353話

「別にそんな高尚な考えを持って生きてねぇんだよ。文字で見ようが声で聞こうが変わらない。ただ金が欲しかった。ちゃっちい金じゃなくて、溺れるほどの大金が欲しかっただけさ」  たったそれだけ。たったそれだけのために武器を作り、薬を使って人々の記憶を奪い傀儡にした。 「金のため、か。金が欲しいのなら、もっと他に方法は無かったのか?」  当たり前だが、ディーディアにはさまざまな職がある。もちろん真っ当なものだ。それで大金を稼ぐことだってできただろう。なのになぜ、人の命や尊厳を奪う方に向かったのか。  眉根を寄せ、サーミフは声無きに叫ぶ。何度も、何度も、胸の内は叫んでいた。しかし男はやはり馬鹿にしたようにサーミフを嗤う。 「なぁ、今〝何故、たかが金のために〟って思っただろ?」  ニヤニヤと、男は嗤う。ヒバリの前に見せていたものとは違う、ドロリと濁った嗤いだ。 「違うだなんて言うなよ? 別に今更取り繕って綺麗事を並べたって滑稽なだけだからな。お前にしちゃぁ〝たかが金〟なんだよ。なぁ、王子サマ?」  男の言う通り、違うと言いたかった。しかし、サーミフは言えなかった。確かに脳裏によぎったのは〝たかが〟金、だった。サーミフにとっては変えることのできない、多くの命と天秤にかけるまでもないモノだったから。

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