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第357話

 未知の毒は何もわからないも同じ。しかし、探すのをやめられないのが人というもの。そんなサーミフを男は数秒のあいだ無言で見つめ、そしてそっと視線を僅かに逸らせた。 「あれは兎都にある貴族の屋敷で作られたもんだ。地下にそういう部屋があんだよ。俺たちは学がねぇから機械を見たってさっぱりわからねぇが、お貴族さんの言う通りなら私有地で育てられた花から蜜みてぇにあれを取り出すらしい。もっとも、花自体の数がそう多くないからな、俺たちもジャブジャブ使えたわけじゃねぇ」  むしろ制限されていたからこそ、あの廃工場では少しの量で済むように霧状にして使っていたのだ。 「兎都以外の者にとっちゃ便利なもんだ。けど、便利だからこそあの花はいずれ絶えるだろうよ。王子サマにとっちゃそれは朗報かもな。けど、同時に解毒方法なんてものも存在しない」  そんな良心的な犯罪者じゃないんでね。そう男は呟いた。  もしも解毒する方法があるのであれば、ウォルメン閣下が把握しているはずだ。そうわかっていてもサーミフは少しの落胆を抱く。 「……先程の話に出てきた〝お貴族さん〟とやらは誰だ」  彼らが大胆に動き、宮殿にいる第三夫人にまで手を伸ばせたのはその貴族の助力あってのことだろう。そうでなければここまで成すことはそもそもできなかったはずだ。否、貴族が彼らの助力をしていたのではなく、彼らが貴族の良いように使われていたと見る方が自然だろう。それを男も理解していたのか、小さくため息をついた。

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