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第360話

「救ってやれ、なんて俺が言えることじゃない。そんな義理もねぇ。だが、あの人に悪意なんてもんはなかったと、それだけは俺が断言する」  ま、あんたの中で俺の言葉がどれほどのもんかなんて、わからねぇけどな。  そう言って笑った男はほんの少し、遠くを見つめていた。その様子をまた、サーミフも静かに見つめる。  誰かが誰かを傷つけることの無い世界。  助け合い、笑い合える世界。  悪を思いつくどころか、抱くことすら無い世界。  そんな世界があったなら……。 (けれど)  サーミフはその世界にはいられない。いられないことを考えるまでもなく理解した自分の年月を、彼は閉じた瞼の下に隠した。  おうじさまの まわりには たくさんの ひとが いました  きゅうでんに きた こどもたちに うれしくなって  おうじさまは たくさん たくさん いっしょに あそびました  おうじさまは はじめて おともだちが できたのです  おともだちと かけまわる とき せかいは キラキラと かがやいて いました  けれど あるとき おうじさまは みてしまいました  おともだちが べつの ひとと あそんだり おはなし している すがたを  おともだちは わらって いました  たいようの ような えがおを おうじさまは はじめて しったのです  けれど それは おうじさまに むけられる ことは ありませんでした  たくさん あそんで、だから わかって しまったのです  おうじさまの そばは うそばかり なのだということを  おうじさまは かなしくて、なきたくて、けれど なけませんでした  おうじさまは すべてを、しかたがないこと と あきらめて しまったのです  そのひから おうじさまには おともだちが いなくなりました  いいえ、きっと さいしょから いなかったのです

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