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第365話
(暇って、恐ろしいな)
答えの出ないことをひたすら考え、思い出す必要のないものまで掘り起こされて脳裏を占める。こんなにも穏やかで静かだというのに、凪の頭の中だけがうるさくて煩わしい。うるさくて煩わしいのに、心は凪いでいる。人はそれを矛盾だというかもしれないが、今の凪は本当にうるさく、そして凪いでいた。こんなことは初めてだと思って、ふと気づく。
思えば、これほどに暇を持ったのは初めてだったかもしれない。
幼き日は貴族の次男として恥ずかしくない教養を身につけるために、ディーディアに来てからは言葉を覚えたり仕事を覚えるために忙しなく動き続けてきた。それが凪にとっての当たり前で、だから急に訪れたこの空白を恐ろしく思うのかもしれない。ならば暇つぶしにサーミフが用意してくれた本でも読めば良いと思うのだが、どうにも気が乗らず指一本動かすのすら億劫だった。ただひたすらに、ぼんやりと窓を見つめる。それがしたいわけではなかったが、どうしてか、それしかできなかった。
そんな時、コンコンと小さな、気づいたのが不思議なほどのノック音が聞こえた。凪が寝ているかもしれないと気を遣ったサーミフか医師の彼だろうか。そんなことを思いながら視線を向けた時、扉がそっと小さく開かれた。そこからヒョコリと覗いた小さな顔に、凪の予想はどれも外れたことを知る。
「あ! やっぱりここにいた!」
様子を伺うようにキョロキョロとしていた少女が、ベッドの上に凪を見つけた途端、瞳をこれでもかと輝かせる。先程までの警戒はどこへやら、彼女は扉を閉めることも忘れてベッドへと駆け寄ってきた。
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