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第370話
「ナイーマ、静かな方が心休まる者とている。今ここでお前が我を通すのは勝手だが、それでナギが休めなければ意味がないだろう」
立場上、ナイーマやツバキが望み、サーミフが許可を出せば凪の意思など関係なく部屋を変えることはできるだろう。だがそれを国王は快くは思わないだろうし、凪とて気が休まらない。仮に夫人の目が離れた瞬間に国王が凪に出て行けと命じたなら、凪はどんな体調であったとしても拒否することはできず追い出されてしまうだろう。サーミフの周りならともかく、国王や夫人の周りにいる使用人たちは凪とそれほど親しくはない。彼らが忠誠を誓うのは国王と第三夫人なのだから、凪を助けてくれるかも怪しい。そんな場所に凪を連れて行くわけにはいかないのだ。
「なにも今生の別れというわけではない。ナギが回復し、父上が許可を出されれば、またいつでも会えるだろう。一時の我慢だ。今、ナイーマがナギのためにしてやれる最大の優しさは、早く休ませてやることだけだ」
ナイーマの幸せな空間は、凪にとってはそうではない。許可しないという明確な拒絶にナイーマは傷ついたように瞳を揺らめかせた。しかしサーミフの言い分が正しいことは理解しているのだろう。幾度も唇を噛み、そしてコクリと頷いて凪から手を離した。促されるまま、侍従長と共に部屋を出る。パタンと扉が閉まる音がして、ようやく凪は小さく息をついた。
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