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第371話

「ナギ、疲れてはいないか?」  大丈夫か、とは訊かない。そんなサーミフに凪は表情を取り繕うことも忘れて頷いた。 「ありがとうございます」  サーミフがあのまま部屋にこなければ、あるいはナイーマの提案に頷いていれば、凪は未だ息をつくことはできなかっただろう。凪いだままの心に、それはひどく負担だった。それを察したわけではないだろうが、サーミフがキッパリと否と言ってくれたことに、凪は心の底から安堵した。  暇も凪の心を蝕むが、母の元はもっと蝕まれる。 「王族だからと目溢ししたのか、ナイーマが警備の隙を知ったのか。どちらにせよ警備体制を改める必要がありそうだな」  今回はナイーマだったからよかったものの、悪意を持つ者だったらどうなっていたか。考えるだに恐ろしい。宮殿とはいえ――否、宮殿だからこそ警戒しなければならないというのに。 「ここは殿下のお部屋にも近いですからね」  元々は妃のための部屋なのだ。ここが危険になれば、当然サーミフの身もまた危うくなる。 「騒がしくしないようには気をつけよう。だから今は何も気にするな」  ベッドに腰掛けて熱を確かめるよう凪の額に触れたサーミフの声音は穏やかだ。ありし日の光景が重なって、凪は少しくすぐったく感じる。それでも心は凪いでいるのだから、これは相当だなと、なぜか他人事のように思った。

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