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第376話
ずっと、側にいた。その姿を見て、世話をするのが自分の役目。側にいた長い年月は、自然と凪に全てを伝えてくる。
今、凪が桃を食べたことにサーミフは心の底からホッとしているのだと。
だから、今は。今だけは、
「ありがとうございます」
使用人としての失態を、謝ることはしないでおこう。
使用人としては、何もかもが間違っているかもしれない。だが、凪はこれが正解なのだと思う。
サーミフのことをすべて知っているとは言えない。きっと知らないことの方が多い。それはサーミフとて同じだろう。そんな主従じゃなかった。
けれど、これだけは、きっと間違いじゃない。
「とても美味しい桃です」
もう一つ、桃を口に含む。素直に口元に浮かんだそれに、サーミフが目尻を和らげたのがわかった。
いつからでしょう
おうじさまは わらわなく なりました
いえ、おかおは わらって いるのです
でも ほんとうに わらっている わけでは ありませんでした
おうじさまは あきらめたまま だったのです
おうじさまが たのしいと いうとき、ほんとうを しっているから たのしくないのです
おうじさまが またね、というとき、かれは つぎを しんじて いないのです
そんな おうじさまの まえに、ひとりの しょうねんが あらわれました
しょうねんは おうじさまが なにを いっても、そばから はなれませんでした
しょうねんは、いつかみた たいようのような えがおを おうじさまに むけます
けれど おうじさまは もう しんじて いませんでした
きっと これも おしばい なのだと
しょうねんも また、おうじさまの おともだちには なってくれないのだと
わらって、わらって、けれど おうじさまは そう おもいこんで いたのです
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