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第380話
「そう心配するな。むしろここで動かない方が立場上拙くてね。父上はご心配のあまり焦っておられるから仕方のないことと諦めるより他ないが。だから、サーミフのお願いは渡りに船と言ったところか」
サーミフが解毒剤を探しているように、父王もまた独自に調査しているらしいが、結果はサーミフが報告した以上の何をも出ていない状態だ。父王としては不安でならないのだろう、近頃はイライラすることが多く、調査員たちを怒鳴っては結果を急かしているらしい。ツバキ第三夫人が側にいる時はそちらに集中するからか態度が柔らかくなるため、それを察した夫人が国王の側から離れられなくなったほどだ。時折、夫人付きの側近がサーミフの元をコッソリと訪れて凪の様子を聞いてくるが、本人の姿はあれ以降見ていない。
「お前も心配が尽きないだろう。私の方でも色々と調べている。だからそう気を張り詰めるな」
まぁ、茶でも飲め、と兄王は手近に用意されているトレーに手を伸ばし、器用に茶を入れてサーミフに差し出す。反射的にそれを受け取りながら、サーミフは苦笑した。
「何を仰っているのか。私が第三夫人を心配するはずがないでしょう?」
夫人を警戒していたことを、この兄は知っている。むしろサーミフと一緒にツバキを夫人にするという意見に反対さえもした。ナイーマが生まれ、彼女が夫人として長い年月をここで過ごした今でも、兄は夫人からも父王からも少し距離を置いている。宮殿の口さがない者たちはそれを無言の抵抗だと言っていたが、そんな簡単な心情などではないだろうとサーミフは理解していた。同じように、兄もサーミフの一言では表せない胸の内を知っているはずなのに、不思議なことを言う。
ありえない、と言い切ったサーミフに、今度は兄が苦笑した。
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