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第381話
「第三夫人ではなく、あの子のことだよ。夫人の息子でありながら、それを無言で許されることのなかった、可哀想な彼のことだ」
足を撃たれたのだろう? と言って、兄は茶に口をつける。ピクリ、とサーミフの瞼が震えた。
「お前の言い分は理解しているつもりだから、あえて言葉にしなくても良い。だが、ここには私とお前しかいない。取り繕う必要もないだろう。したところで滑稽なだけだ」
同じ腹から生まれた兄弟。それなりに仲が良く、側にいた。だから、お互いのことはよく理解している。手に取るように、とまではいかないが、少なくとも父王よりは断然理解しているだろう。
確かにそんな相手しかいない空間で取り繕っても無駄なこと。虚しい時間だけが過ぎ、得るものなど何も無い。
「足の方は回復に向かっています。毒も、おそらくはナギよりも第三夫人の方がよほど多く摂取しているでしょう」
だから、解毒方法を見つけたとしても優先順位は夫人だ。そう告げたサーミフに兄は小さく苦笑する。
「毒を含んだという時点で、その量の大小など心配の前には些細なことだろう? サーミフ、母上も仰っていたではないか。心を、殺すことに慣れてはいけないと」
例え夫人と比べて軽傷であったとしても、心配は心配だろう。解毒薬を願う気持ちの強さは、きっと父王にも負けない。だがサーミフは兄に対してゆっくりと首を横に振った。
「心を殺してなどいませんよ。仮に殺していたとして、それが何だというのでしょう」
「サーミフ、しかし――」
「きっと私は贖罪したいだけだ」
弟を宥めようとする兄の言葉を遮る。サーミフにそんなつもりは無かったが、一度溢れ出たものは止まることを知らない。
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