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第384話
「あの時ああしていれば良かった。あの時こうすることが正解だった。そんなものは結果を見た者だからこそ言える。そして実は、それが本当に正解だったかもわかりはしない。だってそうではないか。この世界は数学ではないのだ。こうすれば必ずたったひとつの正解に辿り着ける、なんて断言はできない」
動くのは人。受け止め生きるのもまた人。感情ある人に、必ずしもの正解など存在しない。
「自分を責めるのは勝手だ。だが、サーミフ、思い出しておあげ。このディーディアの中で、誰があの子の名を一番多く呼んだのかを」
かつてではなく、今。それはツバキ第三夫人ではないはず。
「……お心はありがたく。ですが兄上、私はそんなに良い人間じゃない」
クイ、と持った茶器を手で弄る。ほんの少し茶が揺らめいた。
「私はあの子を疑った。あの子が夫人の子供だったから。子であるならば、親の味方をし、手足となることもあるだろうと。だが、今になって思います。親の味方をしていたのは、私でした」
子は親に盲目で、あるいは見えていたとしても親を愛するが故に守ろうとするだろう。それは正解だった。凪ではなく、サーミフ自身であったが。
「誰が何と言おうと、貴賤がどうであれ、あの人を夫人として娶ると決めたのは父上です。夫人が何かをしたとしても、その人物をろくに調べもせず夫人という大きな力を持つ立場に据えた父に責任がある。我々が責めるべきは、浅慮だった父上だ。だが私は、それをしなかった。夫人にするといったその時は反対したが、すぐにあの子を監視する方向に切り替えた。――思えば、父上を責めたく無かっただけなのかもしれません。敬愛する父を、母上が愛した父を、幸せだと頬を緩ませる父を、あなたせいだと言いたく無かった」
あの時でさえ。
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