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第386話
「お前以外の誰かが引き取っていれば今よりも幸せだったか? あるいは誰かに託して宮殿より出すか? そうだとして、ならばどんな立場で? 養子に迎えるのか? それともお前と同じように使用人として側に置くのか? だが忘れてはならない。あの子は第三夫人が愛する息子なんだ」
王が最も愛する夫人が、その地位にあっても大切だと公言する息子。どれだけ彼が望もうと、周囲は彼を決して放ってはおかない。利用されるだけだ。
「サーミフ、私は今でも、お前が引き取ったことが最善であったと思っている。もちろん、あの子にとっての正解かはわからないが、少なくとも私の目には、最善だった」
サーミフは父王が愛した正妻の息子で、同母兄である王太子もまた気に掛ける存在。そんな彼の側であれば、余程のことがない限り誰も手出しはできないだろう。そして表面上は穏やかさを装っていたとはいえ、この宮殿は化かしあいなど子供の頃から呼吸をするように行なってきた者達の集まりなのだから、サーミフが心の底では凪を警戒していたことなど知っている者は知っていただろう。そしてそのサーミフの警戒が多くの者に生まれるはずだった嫉妬の芽を潰した。仮に今、サーミフが凪への警戒を解き、大切にしている姿を見せたとしても、今日に至るまでの時間、サーミフの側にいる使用人たちは凪という人間に触れているのだ。彼らは嫉妬で凪を害そうとするのではなく、情ゆえに守ろうとするだろう。
それらの全てを、サーミフが計算して行なったわけではない。だが、結果としてそうなっている。その事実を兄は見ろと言っているのだ。
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