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第387話
「兄上、私は……」
「信じておあげ。あの子の言葉を」
憂いを、断ち切るというよりは優しく取り除くように兄は言う。
「罪の意識を抱いてしまうのは、仕方のないことなのだろう。お前は真面目が過ぎるからね。だが、それゆえにあの子自身の言葉を、感情を、否定するのは違うだろう。仮に、お前がそれでも許せないと言って、できる限りのことをして宮殿から出したとして、お前は納得もできなければ更に更に自分を責めるだろう。あの子が宮殿を出ると言うのなら、その道を否定するのは間違いなのかもしれない。だが、何も聞いていないというのに決めつけるのは間違いだ。それは結局あの子のためにも、お前のためにもならない」
今のサーミフが凪にできることは、耳を傾けること。
「サーミフ、大切にしたいと思うのであれば大切にしてやりなさい。苦しませたと思うのならば今こそ寄り添ってあげなさい。否定してきたというのであれば、今度はあの子のありようを肯定してあげなさい」
そしてそれこそが今、お前が本当にしてあげたいことではないのか。
「……兄上には、敵いませんね」
歳がそう離れているわけではない。体格だってそうだ。けれどサーミフの目には、いつだって兄の背中は大きい。決して届かず、しかし包み込むように温かい。
「いや、贖罪をと言うのならば、お前よりもよほど私は間違えたよ。サーミフ」
もしかすれば今この時こそが、兄たる王太子の贖罪。
「先程言った可能性を、あの時もわかっていた。わかっていて、私は手を差し出すことはしなかった。それがどんな理由であれ」
最悪の結果を予測しながら、母の決断に無言で傷ついた様子を見せた幼子にすら、手を差し出すことはできなかった。あの時、サーミフがどんな思惑であの子を引き取ると言ったのか、兄は理解している。理解した上で、あの瞬間、兄はホッとした。
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