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第392話
「あなたには迷惑をかけていますね」
サーミフの命令でこの部屋は限られたものしか入ることはできない。必然的に彼は凪の治療を一手に引き受け、付きっきりとまではいかないが、それなりの時間を凪に費やしている。彼は才ある医師だ。サーミフが医師の中で最も信頼している。本来であれば包帯を替えたり、身体を清めるといった行為は他者に任せることが普通の立場であろうに。だが、申し訳ないと瞼を伏せた凪に、医師は相変わらず表情を変えぬままヒョイと肩をすくめた。
「あなたが小さい頃から診ているんです。別に今更でしょう? 今回の件に関して、殿下が私を呼ばなかったら、それこそ辞職ものですがね」
サーミフが信頼し、彼もサーミフの命令を最優先している。それゆえに凪が怪我をしたり体調不良になればその身体を診るのはいつだって彼だった。少し歳の離れた彼は身体のことであれば凪のことを一番よく知っている。その凪に関して、それも銃で撃たれたなどという重大な件で治療から外されたとあっては彼の矜持に関わるのだろう。そんなことをツラツラと思っていれば、医師はそれはもう深々とため息をついた。
「殿下が悪いんですけどね。それでも、あなたは少し鈍感が過ぎる」
気づいたならば、きっともっと生きやすいだろうに。そんなふうに呟いた彼に、凪は小さく首を傾げた。
「何か、気づいていないことでもありましたか?」
それならば使用人としては重大な失態だ。何かあっただろうかと考えを巡らせる凪に医師はもう一度ため息をついて、手を清めると机に用意されていたトレーに手を伸ばした。そこにはあまり食べない凪の胃を案じてだろう、美味しそうなリゾットがあった。凪の身体を起こし、ベッドに簡易的な机を設置してトレーを置く。
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