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第394話
「治りが遅いと言ったでしょう。まだ当分は無理ですよ。そんなに動きたいなら、ちゃんと食べて、寝て、身体を回復させることですね」
今のあなたは――。言いかけて、医師はその言葉を呑み込んだ。それを言ってしまえば、取り返しがつかなくなる。
「……せめてここから出られれば」
スプーンを持ったまま、凪は顔を俯ける。前髪が目元を隠し、彼の表情は見えなくなった。
「殿下と離れられるのに?」
それがあなたの望みか、と医師は問いかけるように言う。その言葉に凪は目を見開いた。
サーミフと、離れる――。
考えてもみなかった、その可能性。
だが、そうか。
もうサーミフが凪を側に置く理由はなくなり、凪もまたサーミフの側にいる理由はなくなった。凪が先程出られればと願ったのはこの部屋からであったが、考えて見れば、あの頃とは違い凪も大人になったのだから宮殿を出て一人生きていくことだって選べる。それをきっとサーミフは止めはしないだろう。
(そう。きっと、止めたりしない……)
ポタ、と胸の水面に雫が落ちる。広がって消えないこれを、いったい何と呼ぶのだろう。
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