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第396話

 だんだんと凪の顔が俯く。もうリゾットを食べる気力も湧かない。自責の念が広がって、どうしようもなかった。そんな凪を見て医師は再び小さく息をつく。 「夫婦は似てくると言いますが、主従も長年一緒にいると似てくるもんなんですかね。こんなところばかり似ないで良いのに」  言って、医師はポンポンと軽く凪の頭を叩いた。俯いていたことにすら気づいていなかったのだろう、凪がハッとして顔を上げる。 「とりあえず、気持ち悪いとかでないならリゾット食べてください。知ってますか? 人間の三大欲求は睡眠欲、食欲、性欲なんです。しっかり食べて寝ないと思考もまともに働かなくなる。他者のためを思うのなら、あなたが今一番すべきことはちゃんと食べて、ちゃんと身体を休めること。これ以外にありません。それでもどうしても食べられないというのなら、点滴で栄養ぶち込みますよ?」  あなたを生かすのが私の仕事だと言い切った医師は、無表情なのに口元だけで笑みを作って見せた。作られたのは笑みだというのに恐ろしさしか感じられないというのは何故だろう。  どうぞ、と促されて、凪はギクシャクとしながらもスプーンを動かした。小鳥の啄みかと思うほどの量を口に含む。それを幾度も幾度も繰り返した。  このリゾットは美味しいはずだ。宮殿の厨房を預かる者たちは皆が一流で、使用人相手だからと味を雑にすることはない。そのはずなのに、どうしてかあまり味がわからない。否、わかってはいるのだ。けれど、それはただ舌を転がるばかりだった。

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