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第402話
(幾度――)
――幾度、言葉を呑み込んだのだろう。こんな状態でさえ、表に己を出し切ることのできないその慣れてしまった姿が痛々しい。そんなことを思っているうちに、気づけば手が動いていた。
「見なくていい」
そっと、後ろから凪の瞳を手で覆い隠す。ピクリと凪の肩が跳ねたが、サーミフは止まることをあえてせず、抱え込むようにして目隠しした手をそのままに抱き寄せた。
「見たくないものは、見なくていい」
窓の向こうには、小さくなったものの未だに親子の姿が見える。どうみても美しい、穏やかな光景だ。それがいっそ残酷で。
凪の瞼の裏には今、何があるのだろう。
ただただ見てしまった、自分は決して入ることのできない親子の姿か。それとも、在りし日の光景か。
はしゃぐような笑い声がサーミフの耳奥で聞こえるのは何故だろう。
「……醜く、愚か」
震える唇から、氷のような言葉が出る。チラと視線を向ければ、凪は己の唇を噛んでいた。
「なんで……、喜んであげることすらできないッ」
願った、はずなのに。
恥を知れ。愚か者。そう凪は何度も何度も拳を振り上げて殴っているようだった。あるいは、切り刻んでいたのかも知れない。
だが、その真っ白になるほど握り込まれた拳を叩きつけたいのは、切って、切って、切り裂いてしまいたいのは、きっと凪自身なのだろう。
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