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第403話

 たった一瞬の、美しき光景。だがそれを受け止め切ることが今はできない。だが止めろと言って止めるようであれば扉の前に兵を配置する必要もなかったし、知れば凪はもっと自分を責めるだろう。 (やはり無理だな)  ここは母がサーミフのために作った居場所。だが、凪にとって安らげる場所ではない。だから――。 「ナギ、私は少し宮殿を離れる。ナギも来なさい」  お前は私の側仕えなのだから。  目を塞いだまま、言い聞かせるように耳元で告げる。ピクリと反応した凪は命令だと思ったのだろう。呼吸を荒げたまま、しかし、はい、と静かに頷いた。ようやくその姿が僅かも見えなくなって、サーミフは凪の目元から手を離す。凪の瞳は微かに潤んで揺らめいていたが、サーミフの手は乾いたまま、濡れることはなかった。 「はじめまして、おうじさま」  そういって えがおを みせたのは、おうじさまより ほんの すこし ちいさな しょうねんでした。  また おとなたちが つれてきた〝おともだち〟か、と おうじさまは おもいましたが、  それを いうことなく ニコリと わらいました。  いつもとおりに あそんで、じかんが きたら おわかれ。  おうじさまは ほかの〝おともだち〟と おなじように しました。  しょうねんは たのしそうに わらっています。  いつもとおり。いつもとおりの はずでした。  けれど ふしぎなことに、しょうねんは おうじさまから はなれようと しませんでした。  まいにち、まいにち、しょうねんは おうじさまの ところに きて わらいます。  たいようのように わらいます。  あなたと いるのが たのしいと。  いつもとおり、いつもと おなじはずなのに、しょうねんは おうじさまに わらいます。  たいようの ようだと、おうじさまが おもう えがおを。  おうじさまには しょうねんの ことが よく わかりませんでした。  けれど しょうねんは いつだって おうじさまの そばに いたのです。

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