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第404話

 森の離宮と呼ばれるものが宮殿からほんの少しだけ離れた場所に存在する。本来の名前はもっと長いものであったが、長すぎるため森の中にいるような空気の美しい建物から森の離宮と皆が呼ぶようになった。決して森の中にあるからではない。  ここはサーミフの母が宮殿の生活に疲れた際に使用していた離宮で、建物も庭も調度品のひとつひとつですら、ゆったりと過ごせるよう吟味に吟味を重ねられている。落ち着いて過ごす、それを目的とした離宮は母が自分の金で建てたので、王室が持つ離宮には珍しく、所有権は母にあった。本来であれば、母が亡くなった時に子である王太子かサーミフに相続されるのだが、よくここに母を訪っては共に過ごしていた父王が縁として欲しがり、書類上の相続は保留となったままではあったが、実質父王が所有しているような状態になっていた。そんな離宮にサーミフと侍従長が厳選した数人の使用人達が次々と荷物を運び込む。その中には凪をずっと診ていた医師もおり、彼は自前の道具や薬の類を部屋に運んでいた。 「事件解決に奔走し、他国との協力を取り付け、今もなお尽力しているサーミフに褒美の一つもやらぬおつもりか、と兄上が父上に詰め寄られてな。この離宮をいただいた」  まだ足の治らぬ凪を抱き上げて建物の中に入りながらサーミフは告げた。  あの日、サーミフは宮殿を離れることができるよう兄に協力を願った。今から土地を買って住む場所を建てるのでは遅い。今すぐにでも移動できるよう、すでに建てられている、今は誰も使っていない別邸を借りるか、あるいは貴族の別荘として売られているものを買い取るかしたいと。しかしそれを聞いた兄はすぐに〝森の離宮をサーミフに相続させろ〟と父王に迫った。母が亡くなって時間が経ち、ツバキやナイーマが側にいる今ならば父王もさほどこの離宮に執着はしないだろうという計算もあっただろう。兄の思惑通り、父王は離宮に関するすべてをサーミフに相続させる書類にサインした。そうしてサーミフは自分の思い通りにできる離宮を手に入れたのだ。

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