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第406話

 森の離宮は安らぎのために作られたものだ。この部屋に限らず、華美なものは存在しない。その代わりたっぷりと日の光が取り入れられるよう窓はどれも大きく、壁紙やカーテンも淡い色で揃えられている。飾られるのは価値のある骨董品や肖像画などではなく、美しく咲き誇る生花だ。  柔らかな日の光。シンプルで優しい調度品。鼻腔をくすぐるのは甘い花の香り。なるほど、確かに森の離宮と呼ばれるだけあって空気が澄んでおり、とても心地よい。知らず、凪はホッと息をついていた。 「しかし、今更ですが私も連れてきていただいてよかったのでしょうか。このような姿では、碌にお役に立つこともできませんが……」  ベッドの上で伸ばされた自らの足を凪は見つめる。医師の尽力もあって痛みはもう無いが、それでも十分に動き回るということはできない。サーミフの世話をするどころか、世話をされている状態だ。そんな己をゆっくりと過ごすことを目的にしている離宮に連れてきてよかったのかと、凪は心配そうにサーミフを見上げる。しかしサーミフは何でも無いことのように頷いた。 「邪魔だと思うのならそもそも連れてきたりはしない。それに、動き回るだけが仕事でもあるまい」  心を煩わせないため、使用人は数人しか連れてきていない。それも忠義厚く、凪に友好的な者たちばかりだ。凪が動き回れずとも問題はない。

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