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第407話

「宮殿にいたときならばともかく、この離宮に来たからには侍従長をずっと私の側に縛り付けておくわけにはいかないからな。あやつがいない時は、ナギが采配してくれ。私のことはよくわかっているだろう?」  それは何の特別もない、普通の言葉だった。贋金が発覚する前であればよく耳にしていた言葉。それが何だか懐かしくて、凪はクシャリと不器用に笑った。その姿を見て、サーミフは胸の内でホッと息をつく。  本当は、何もしなくて良いと言いたい。怪我をして、心も傷ついているだろう凪を休ませてやりたいと思う。何も心配しなくていいから、ただゆっくりと過ごして欲しいと。だが、あの時、サーミフの肩にある飾り紐を結び直した姿を見た時、それは自分が思う最善でしかないのではと思った。あの瞬間は確かに、起こった様々なことが消えて、かつての二人に戻っていた。少なくともサーミフには、そう見えた。  だから、これはひとつの賭けだ。 「殿下、失礼いたします」  サーミフの言葉に凪が頷いた時、扉の向こうから声が聞こえた。サーミフが許可を出すと、使用人の一人が美しいティーカートを押して入ってくる。彼は静かにサーミフに頭を垂れた。 「王太子殿下からタルトをいただきましたので、会議に向かわれる前にお茶をされてはと、侍従長より指示が」  その言葉に二人の視線がティーカートに向けられる。そこには確かに、艶やかな果実が山のように盛られた美しいタルトがあった。相変わらず弟に甘い兄の心尽くしにサーミフはクスリと笑う。

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