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第409話

「ありがとう、ございます」  ベッドの上でジッとしているだけではない。そう分かった瞬間、凪は綻びそうになる口元をキュッとつぐんだ。礼を言う声も、車椅子の肘掛けを撫でる指先も、ほんの少し震えている。気を抜けば涙が溢れてしまいそうだ。 「ではご厚意に甘えて、さっそくタルトをお切りいたしましょう」  ふわりと微笑んで、凪はティーカートに手を伸ばす。当たり前だが、立っている時よりは高い位置にあるとはいえ、この程度で落ちるような腕はしていない。サーミフの使用人になってからずっと、侍従長に鍛え上げられてきたのだから。 「王太子様は殿下のお好きなものをよくご存知のようですね」  タルトを切りながら凪がポツリと呟く。たくさんの果実を積み上げられているだけのようにも見えるが、そのひとつひとつがサーミフの好きな果物だ。嫌いなものや苦手なものは一切入っていない。きっと兄君である王太子がサーミフのためにあれこれと注文して特別に作らせたものなのだろう。 「過保護でいらっしゃるからな」 「愛情ですよ」  そう、これはまったき愛情だ。この果実のひとつひとつに慈愛が込められている。  宮殿で長く生活している凪は、全ての同母兄弟がこうでないことを知っているが、それでも王子王女の頂点に立つと言っても過言ではないこの二人が仲良い姿であれば、なるほどナイーマが同母の兄に夢を見るのも仕方のないことなのかもしれない。

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