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第412話

「理想と思う兄の姿。理想と思う弟の姿。そうであれない自分の姿。だが弟の立場からすれば理想であれなかった兄上を責める気持ちなど湧かぬし、きっと兄上も理想であれなかった弟を、それゆえに厭うこともなさらないだろう。兄には兄の弟を想う感情が、弟には弟の兄を想う感情があるのだから。それを他者がどうこうすることはできないし、してはならない。ゆえに私は、兄上のような兄にはなれないお前を、だから駄目だとは思わないし、他者であればすべては上手くいったとも思わない」  それに、とサーミフはほんの少し瞼を伏せる。 〝サーミフ〟  耳の奥で聞こえる声。忘れることでしか自我を保てず、しかし結局忘れきることなどできなかった、あの光景。 「それに、兄上と私は少々特殊だ。あれがあったからこその今だろう。だが、私たち以外の誰にも、同じ道を辿ってほしくはないと思う。だから、凪は今のままでいい」  あの日の光景を、繰り返したいとは思わない。誰かに繰り返させようとも思わない。  あんなものは、知らない方が良いのだから。

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