416 / 421

第416話

「まったく、部屋にいないから探し回ったじゃないですか。まだ薬も診察も無くすほど、あなたの身体は回復していませんよ」  時間を忘れたのかと言われ、凪はハッとして懐から懐中時計を取り出した。それが示す時間を見て肩をすくめる。 「すみません。すっかり時間を忘れてしまって……」  懐中時計の針は、とうに診察の予定時間を過ぎた場所を指し示している。これは随分と探させてしまったようだ。  申し訳ない、と身を縮こまらせる凪に医師はひとつ大きなため息をついて、ツカツカと近づいてきた。そしてほんの少し屈み、凪の顔を覗き込む。 「まぁ、顔色が良いので構いませんけどね。でも、一度部屋に戻りますよ」  言うやいなや、医師は凪の背後に回って車椅子を押し始めた。 「車椅子は慣れましたか? 足が痛いとか腰が痛いとか、ありません?」  コツリ、コツリと回廊を歩きながら医師が問いかける。それを聞いた凪はツイと肘掛けに指を滑らせた。

ともだちにシェアしよう!