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第420話

「失って初めて大切さに気づくとはよく言ったものです。不満に思っていたはずなのに、療養を命じられて、時間が来ると、自分がやっていたことをきっと他の者達がしているのだろうと考えて、浮かんだのは――嫌だ、ということでした。馬鹿馬鹿しいと、自分でも思うのですが」  それでも胸の内に浮かんだそれを、消すことはできなかった。 「それに先程、気づいたことがあります。気のせい、という可能性も大いにありますが」  ゆっくりと、瞬きをする。  朝は寝続けようとするサーミフを起こして、湯浴みの準備をして、衣装を整えて、側に控えてあれこれと世話をして。  そのことを深く考えたことはなかったが、今にして思えば、 「一番近くにあることを、許されていたのだと」  例えそれが、どんな理由であれ。 「それが嬉しかったと?」  医師が手を止めて見上げるようにして凪を見る。その視線に、凪は微笑んだ。 「ええ、今更ですが」  もしも凪がサーミフに仇なそうとしていたら、今頃サーミフはこの世にいなかっただろう。

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