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第427話
「では、殿下のお部屋まで運んでいただけますか? 一緒に行きますから」
そう言えば、男は納得したように笑みを浮かべて頷いた。ゆっくりと、もう慣れた手つきで凪も車椅子を動かす。
「そういえば、先程から思っていましたが少し顔色が良くなりましたね」
無言で歩くのも、と思ったのだろう。男がそう声をかける。存外穏やかな声に、凪は思わず男を見上げた。その視線に気づいたのだろう、男は肩をすくめてほんの少し笑う。
「皆、心配してたんですよ。会う度にどんどん顔色が悪くなっていくから、もしかして容体が悪化しているんじゃないかってね」
医師を信用していないわけではなかった。むしろサーミフの側に仕える者達は皆、あの医師こそがこのディーディアで最高の腕と知識を持っていると思っている。だがその医師にさえ治せないほどに、凪の傷は深く命に関わるものなのかと。
「ご心配をおかけしたようで」
申し訳ない、と呟く。もちろん心の底から凪はそう思っていた。同時に、なぜだか胸の内がじんわりと温かくなっていくのを感じる。
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