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第428話
彼は、元とはいえ影の者だ。幾度か凪も話したことはある。サーミフが凪を疑っていたのなら、あの幾度かの接触は凪を探るためのものだっただろう。
彼だけではない。突如国王の夫人になった女の息子を、彼らは持て余したに違いない。いくら主人が引き取ると言ったからとはいえ、その胸の内は決して穏やかとは言えなかっただろう。そんな彼らが、凪を心配していたと言ってくれた。もちろん、それが単なる社交辞令である可能性も高いだろう。だがなんとなく、それは本当のことのように思えた。
「共に殿下に仕える仲間ではありませんか。私なんかは歳が離れているので、失礼ながらナギ殿は息子のような感じですけどね。今回は事が事でしたから、事情を知る者はそう多くありませんが、それでも、知っている者達は皆一様に心配していましたよ。宮殿に残った者たちも今のナギ殿の姿を見ればきっと安堵することでしょう」
車椅子に乗っているのだから、まだ完全に治ったわけではないと誰の目から見ても明らかだろう。それでも、ベッドで休んでいた時よりずっと、凪の顔色は良い。男は確認するように凪の方へ視線を向け、そしてニコリと笑った。
「うん、やはり顔色が良い。医学的なことは門外漢ですが、この離宮は少しでもナギ殿の気晴らしになりましたか?」
それならば良いのですが、と呟く男に、凪はそっと辺りに視線を滑らせる。
ここはくつろぐための離宮。癒すための離宮。穏やかで、優しい時間が流れている場所。
「……ええ。ここはとても心地が良いです。何より、心が休まる」
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