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第429話

 きっとサーミフの母君の趣味なのだろう。よくよく見れば柱の一つ、小さな調度品に至るまで全てが質の良い物だとわかるが、それを主張しているわけでも無い。あの宮殿を見慣れて仕舞えば、こちらは――取り繕わずに言えば、質素であるようにも感じる。こぢんまりとした空間を広く使うため最小限の家具がちまっと置いてあるだけ。必ずしも必要ではないが数多く置かれているのは生花の活けられた花瓶くらいだろうか。  宮殿が豪華ならば、この離宮は静謐だろうか。  生まれ育った兎都の屋敷もどちらかと言えば豪華であった。そんな凪にとってこの離宮は初めてとも言える空間であったが、とても、とても呼吸がし易い。 「なら良かった。私達が心配していたのは本当ですが、私達以上に殿下は心配されていましたからね。ナギ殿が元気にならないと、殿下も心穏やかにはなれないでしょう」  サーミフが心配していた。その言葉に車椅子を動かしていた凪の指がピクリと跳ねる。静かで何も聞こえないはずなのに、カラカラと回るタイヤの音が耳に響いた。

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