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第430話

「……あなたは後進に託されたとしても何もしない方ではない。ならばきっと、今回何があったかをご存知のはず。殿下は……きっと、罪悪感を抱かれているだけです」  自分の命令でヒバリにつけたことはもちろん、何よりも凪を長年疑い続けたことに。  彼は凪よりもずっと長くサーミフの側にあり、その役割上、彼の疑いや懸念を誰よりも耳にしていただろう。ならばわからないはずがないと凪は視線を向けるが、彼はキョトンと瞳を丸くさせていた。 「そりゃぁ、あるでしょうね。罪悪感を抱かないほど、殿下は冷徹になれなければ、記憶力が悪いわけでもないですし。でも、あなたを心配していたのは昔からですよ。何も今に始まったことじゃありません」  覚えてませんか? と男は微笑む。必死に記憶を掘り起こそうとする凪を、本当に息子を見る眼差しで見つめていた。 「ナギ殿は身体が弱いわけじゃないですけど、鋼というわけでもない。このディーディアに来てから両手で数えきれない程度には体調を崩していたでしょう? あなたは気を張って何でもないように振る舞うから、殿下がどうやって休ませようかと頭を悩ませていらっしゃいましたし、こっそり厨房にナギ殿の食事は軽くするように言ったりしてましたよ。意地を張ることもできず寝込んだ時なんて、すぐに医師を向かわせてましたし、一時間に一回は侍従長にあなたの様子を聞いてました」  まるで初めて高熱を出した赤子を心配する親のようだ、と侍従長が呆れたようにため息をついていたのを男は知っている。きっとサーミフは無自覚だったのだろうが、あれを心配といわず、何を心配というのだろう。

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