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第436話

「お前が慣れてきてからは任せていたからな。しかしそろそろ私も勘を取り戻しておいた方が良さそうだ」  いざという時に使い物にならぬのでは話にならない。凪を指導したのは己であるという自負もあるのだろう。 「先程お前は言ったな。あの絵本は何なのかと。事実だけを言うのであれば、あれは母君がお子である王太子殿下とサーミフ殿下に贈られたものだ。おそらくは王太子殿下も大切に保管されているだろう」  今は亡き母との思い出。やはりそうかと凪は頷く。しかし多くの者が予想できるであろうその事実だけで、侍従長が先程のような顔をするわけがない。そう確信している凪は無言でお茶を飲みながら続きを待った。 「あの絵本は一般的なものだ。何も母君が一から作らせたものではない。だが、どうにもあの絵本に出てくる〝おうじさま〟は王太子殿下にも、サーミフ殿下にも似ていた。それゆえに母君は、あの絵本をお二人に贈られたのだろう」  側から見れば恵まれている二人だった。整った容姿を持ち、父親は国王。母親は国王に一等愛される夫人。地位は盤石で、何不自由ない。王太子はもちろん、サーミフもまた兄である王太子を慕っていたから、自分自身が国王になることはないという未来に悲観することも嫉妬することもなく、進んで兄の補佐をする道を極めだした。野心を抱く者がいないと言えば嘘になるが、ここまで完璧な者が長男次男であると手の出しようもない。

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