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第446話
「ナギ、ひとつそなたの言葉を訂正しよう。そなたは私にならできることが山程あると言ってくれたが、もう、私が殿下にしてあげられることなど何も無い。だが、そなたならば、それこそ山程にあるだろう。私の役割はもはや導くことではない。築かれていく未来を静かに見守ること。それだけだ」
そしてそれこそが王妃様が願い続け、侍従長が叶えたいと夢見た世界でもある。
考えるように瞼を伏せた凪を、侍従長は微笑ましく見つめる。知らぬことと流してしまったとて誰も責めないというのに、決して流すことなく受け止めるその姿。その姿をずっと見つめていた瞳を知っている。
すっかり冷めてしまった茶を侍従長は口にする。自分ができるのは、ここまでだ。これ以上は単なる命令、押し付けになってしまうし、それがわかればサーミフは義務感ゆえに己の胸の内から永遠に目を背け続けるだろう。凪の心を無理矢理に動かしたとて、永遠に失うものはあれど、得るものは何も無い。
この離宮には信頼できる者はもちろん、凪に優しく少々おせっかいな性格の使用人を選んで連れてきた。きっと、離宮で過ごす時間が凪に様々なことを教えてくれるだろう。もしかしたらもう、少しは耳に入っているかもしれない。
(王妃様、サーミフ殿下の時がようやく動き出します。これで少しは、ご安心くださいましょうや)
胸の内で呟けば、ふわりと何かが肩を撫でたような気がした。それに口元をほんの少し緩めて、侍従長は得難き愛弟子を見つめた。
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