450 / 453

第450話

「私が聞いているのは、殿下は必要がない限りは宮殿にお戻りになる予定はないとのことですよ。この離宮も宮殿からさほど離れているわけでもないですし、公務に支障をきたすこともないのだからと仰っていました。陛下はお淋しそうになさっていましたが、王太子殿下が守ってくださっていますから、特に問題はないかと。陛下も、王太子殿下やサーミフ殿下には強く出られませんから」  王太子が後悔しているように、国王もまた王太子やサーミフに対しての後悔や申し訳なさがある。ツバキの件では無理を言ったとも、二人の息子を傷つけたとも自覚しているのだろう。ましてサーミフの元には凪がいるのだ。愛しい女性を妻にしたいと願った自分が受け入れることすらできなかった、彼女の息子が。 「お戻りになる予定がない……。では、お妃候補の方々は、じきにここへ?」  あの宮殿に大勢いた美女達はどうするのかと凪は首を傾げる。彼女達はサーミフの妻となるために集められたのだから、サーミフがここにいる以上、彼女達も移ってくるのだろうか。しかし凪の予想に反して彼女は淑やかに笑いながら、違う違うと首を横に振った。 「こちらにはいらっしゃいませんよ。もしかしたら宮殿にももういらっしゃらないかもしれませんが」  笑いながら告げられたそれに凪は思わず目を見開いた。車椅子を押す手を止め、彼女を振り返る。そんな凪に彼女は柔らかく目を細めた。

ともだちにシェアしよう!