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第453話

「王太子殿下には許嫁がいらっしゃいますし、お世継ぎは問題ないかと。ですから我々はただこの離宮で殿下が心からお寛ぎになれることだけに注力すれば良いのですよ」  それがサーミフのためにできる最大のことだと微笑んで、彼女はティーカートから手を離すと扉をノックした。中からの応えに大きく扉を開く。そして凪に入るよう笑みを浮かべながらそっと促した。 「失礼いたします」  声をかけて、車椅子を押す。中に入れば、着替えを手伝っていたはずの侍従長の姿はなく、サーミフがただ一人立っていた。座ることもせずどうしたのだろうと首を傾げ、彼が視線を落とす先を見て凪はハッとする。 「殿下、申し訳ございません。それは……」  サーミフの視線の先、大きな手がなぞっているのはあの絵本だった。サーミフの帰宮に慌てていて端に置いておくのを忘れていた。  凪に詳しいことはよくわからないが、サーミフにとってこの絵本はただの思い出の品というわけではないらしい。ならば片付ける場所を聞くにも慎重にしなければならなかったというのに。 「あの、殿下……」  車椅子を押してすぐに側へ寄る。どう説明しようかと視線を彷徨わせる凪に、サーミフはフッ、と小さく笑った。 「何を聞いたのか知らないが、そう慌てることもあるまいに」

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