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第455話

「面白いというより、懐かしいと思っただけだ。随分と久しぶりに、お前のそんな姿を見た気がする。懐かしいと思えば思うほど、あの頃を思い出してしまってな」  それはつまり、使用人として働き始めたばかりの凪を――もう忘れてしまった失態の数々を思い出しているということではないだろうか。それに思い当たった瞬間、凪は顔をカッと赤らめた。 「忘れてくださいッ!」  何をやらかしたのか、凪はもう覚えていない。覚えてはいないが、絶対に碌でもないことだという確信はある。そんなものを思い出して微笑ましく笑うなんてサーミフは悪趣味だと詰るように視線を向けるが、王族として生きてきた彼にとって凪の責める視線など怖くもないのだろう、また優しい声音で笑った。 「今の軽口を叩くお前も気に入っているが、あの頃は何をするにも緊張して辿々しい――言い換えれば初々しいお前も可愛かったぞ」 「今すぐ忘れてください記憶を抹消してくださいそれは必要のないものです」  いっそ見事な早口で言い切った凪は、これ以上遊ばれてはかなわないとサーミフから視線を背ける。そしてようやくお茶の存在を思い出し、これ以上失態の上乗せをするわけにはいかないと手を伸ばし、そしてピクリと止めた。ゆっくりとテーブルの上に置かれている絵本に視線を向ける。  元々、このテーブルはちょっとしたティータイムを楽しむためのものであるので、そう大きくはない。ティーカップと菓子の皿を置くには絵本を除けなければならなかった。  その原因を考えれば甚だ不本意ではあるが、機嫌の良さそうなサーミフに言い出しても良いものか。無言で思案し始めた凪の視線に気づいたのだろう、サーミフは笑うのを止めて、同じように絵本へと視線を向けた。そしてそっと手に取る。

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