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第456話
「兄上も賛同してくれたことだ、もう離宮に居を移そうと思い手放せぬものは全て持ってきた。これもその一つだが、手放せぬというわりに奥深くに仕舞っていてな。随分と久しぶりに見た気がする。ナギは、この絵本を知っているか?」
ゆっくりと、大きな手が表紙を撫でる。きっと幾度も幾度もそうしていたのだろう動きを目で置いながら、凪は首を横に振った。
「いいえ、ここで初めて目にしました。といっても、内容は未だに存じませんが」
主人の、それも代わりのない大切な品を勝手に読むことは憚られる。それゆえに知ったのはタイトルだけだと言った凪に、サーミフは頷いた。
「そうだろうな。お前には多くの絵本を与えてきたが、それでもこの話だけはどうしても渡すことができなかった」
凪はディーディアに来た時、読み書きがほとんどできなかった。それを見かねたサーミフが勉強の一環として絵本を渡してくれたのだが、確かにその中に〝とある おくにの おうじさま〟というものは無かった。サーミフの過去を知った今ならば、ほんの少しではあるがその理由を察することはできる。
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